2013年12月31日

猪谷美智子詩集

<猪谷美智子詩集> 記 中尾彰秀                  詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(50)

 「水槽の中で」 猪谷美智子詩集 2013年 澪標(みおつくし) 1800円+税 A5版 140ページ 33篇

        日々の現象の観察を
        執拗なまでに
        繰り返すことによって
        醸し出る哀愁は深い。

        日常は絶好のキャンバスであり
        被写体だ
        一つ一つを
        継ぎ足していけば
        人生になる
        エッセンスを
        研ぎ澄ませば
        詩になる
        いや
        もともと
        一本の人生
        詩という哀愁装置に
        リセットしたのだ。

        この詩群の哀切さは
        存在のシリアスなあり方を
        そのまま受け入れ
        そこに自らへの残酷な程の
        自然主義的な修業と
        見なしていることだ。
        確かに
        我々と我々を取り巻く世界存在すなわち
        森羅万象は
        深きにおいて
        美しくも醸されている。

        「愛犬が死んで」

 <無垢の木で作り十五年と二か月使った犬小屋を 燃やした 愛犬が死んで半年目の春
  
  土の温かみがなくなり 荒々しい冬の空気で乾ききった木は 私の心に感傷を与える隙もない
  潔さで 燃えていった

  犬が墓の下で待っていたのかも知れない 犬小屋が早く行きたかったのかも知れない 犬にと
  っては たった 一つの所有物だった小屋

  犬が死んだとき 出入りの大工が 無垢の桐板で棺を作ってくれた 作法どうり(偲び釘もあった)
  大工の心が嬉しかった

  犬の葬儀屋は 棺の火葬は受けかねると言った 仕方なく 夫と私は空になった箱を燃やした
  ・・・・・  メラメラと 蛇の舌のような火が ・・・・・  

  私は犬の死んだ悲しさも忘れて 不規則な一列の繋がりになり激しく怪しく動く炎に 吸い寄せら
  れていた>



  


Posted by nakao at 18:02Comments(0)芸術芸術