2009年07月21日

あなたの人生を至福にする百の詩集(7)

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  「 目的地 」     名古きよえ詩集  土曜美術社 2000円+税

2001年出版、A5版、127ページ。色鉛筆で描かれた線が、光受け、立体的に浮き出て、
もつれあう。もつれ合った心がついには、明確な意味を持つに至る。そんな感じの表紙絵。
<西の駅>
「夕日にむかって 走るローカル列車 コスモスを車窓にうつしながら ひた走る 老人のお
しゃべり 学校や家の模様が ちらほら見える中学生 母子の絆を プラットホームに下ろし
ながら  鉄橋をわたる 車輪を響かせて 映る 移る 草木の匂い 川の流れ 電車は夕
日の方へ 落ちてゆく  私の下りる駅は まだ近つかない 見知らぬ駅で 私は下りるだろ
う 無人駅で もし 呼ぶとしたら 親しかった人達の列車 彼らの到着を待って わたしも乗
せてもらおう ククコト ククコト 列車は 風に乗っていく 駅は 手を振るだろう 一本杉のよ
こうに」
 様々な風景が、分身か友人の様に思えるのは、大自然に融け込みたい一心なのであろう。
遠い地に於いても、どこに居ても、この自然回帰は誰にでも共通のやさしさなのだ。
<花>
「菜の花が 咲いた モンシロチョウ モンキチョウ 花から花へ 飛んでいる 少年が自転車
を止めて 見ている わたしは ふと思う 人はだれでも 生まれたとき プレゼントされた花が
心のなかに 咲いているのだと 嵐のときは 助けを求めて声を出し 旱魃のときは 苦しくて
涙を流す 踏みつけられたら 手をのばし 穏やかなときは 静かに薫っている 菜の花や 菫
薔薇のようなのがあるだろう 忘れていても 思い出せば また咲きだす 胸いっぱいに 咲き
匂うこともある 生まれたとき プレゼントされたのだから」

 言葉の背景の生命感が浮き立つ。これは、いのちの歌だ。生きることへの賛歌だ。百の千の
万の勇気を与えてくれる詩だ。表題の「目的地」とは、おそらく、どこか遠くの楽園などでなく、こ
こに生きている場を深く理解し、やさしき自然を持とうとする意念なのであろう。

  


Posted by nakao at 15:18Comments(0)イベント情報