2009年09月25日

北山りら詩集

<<< 北山りら詩集 >>>   詩評 中尾彰秀  詩人・ピアニスト

 2009年9月20日(日)、「詩を朗読する詩人の会”風”」第404回ゲストは、
北山りら さん。詩集「一連托生」(編集工房МО吉、税込1000円)がある。
B6版、120ページ、出版2009年。

 大自然の循環が、溢れるやさしさと情熱で描かれている。「砂時計」「花言葉」
「メドゥサの髪」「桜しぐれ」「いのち」「一連托生」の各編に分かれている。70篇
の詩。
        「水」

<窓ガラスにひとすじを描いて 消えてゆく 滴 何処に 生まれ変わってゆくの
だろうか 川の水を掬うと 指のすき間から ポタポタと零れる 水の破片 流れ
る川に落ちては また流れ 何処かで別の雫に 形を変えて 出逢ってゆくのだ
ろう    いつか あなたの体内を 循環れてゆく あなたの胸が熱くなると 瞳
から溢れる いくつものひと粒に とどこおらずに 奏でている 透明のメロディー
を めぐり輪廻る その一生を>

    人間の生き場は、まことに神聖なものである。心がけひとつで、すごく美し 
   く輝くのが人生だ。詩の言葉は、しかし、自らの生き場から出るものだから、
   言葉は極めて具体的である必要がある。この「水」は、確かに具体的の様だ
   が、個性的な生き方となっているだろうか。その点は、大いなる可能性を持つ
   音楽性溢れるすばらしい作品だ。なお、新人類とでも言うべき閃きのあるテー
   マは、癒しの方角を明確に進んでいる。


     


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2009年09月25日

如立する猫

<<< 如立する猫 >>>  中尾彰秀詩集「うちゅういち」
                     竹林館・800円+税

   いい詩は、やはりいい詩だ。具体的で、なおかつ人生の奥行きが
  ちりばめられている。早い話が、心が豊かになる。人生、いい詩に出
  合って、いい人生を送りましょう。決して、猫のすばらしさを忘れる事
  なく。健康に良い蕎麦を、しっかり食べながら。

         「如立する猫」

<如立する猫は 如立する猫だ  例え 対 犬であろうと 対 人であろうと
予知していた 天変地異 に対してであろうと  たまさかに 私の目撃した
如立する そのカラフルな虎猫は 右手で箸使い 蕎麦を喰ろうていた
  ふてぶてしき瞳   私は三日三晩 自らが紀の川河原に 素裸で如立し
雲を引き寄せる荒行の夢に うなされた おいでまし河の精霊山の精霊
  江戸の風狂絵人 看板担う 大阪は某蕎麦屋 この次は並んで立って
喰ろうてやろう>

       <うちゅういち> 中尾彰秀第13詩集
         ポケット詩集、58ページ、22篇、平成14年出版

(購入法)郵便振替 森羅通信の会 00940-4-29604 定価800円+送料200円
  


Posted by nakao at 14:55Comments(0)芸術

2009年09月25日

きのくに詩話会(2)

<<< きのくに詩話会(2) >>>  記 中尾彰秀  詩人・ピアニスト

 「きのくに詩話会(2)」は、2009年8月20日(日)、タオハウス1Fにて。
飯島和子詩集「汽車のけむり」(編集工房ノア、定価2000円)を扱いました。

 日本国内で、戦争を体験された詩人は、日々の暮らしの中で社会を人間を見つめ
、平和な心を貫いている。なを、ご高齢となっても恋心は衰えることなく、読者にやさ
しい風を吹かせている。

      「汽車のけむり」

<八尾に 汽車が走っていた頃 線路のねきの 植松の村に きぬ子は ひとりで住
んでいました 大阪で開業している歯医者の だんながいました 時折 たずねてくる
だんなと御飯を食べる時分には きまって ごっと ごっと という汽車の音と けむり
の匂いが 窓から はいってきました しあわせといえば しあわせなくらしやったんで
す やがて きぬ子は男の子を産みました 正男と名付けられたその子は 生まれると
すぐ 歯医者の家に引きとられて行きました しばらくして きぬ子は 遠い島根に帰っ
て行きました ふわり ふわり 汽車のけむりを残して 帰って行きました 青年になった
正男は 兵隊検査の前に 自分を産んだ母に いっぺんだけ逢いに行ったという きぬ子
は 嫁入りして 子どもを三人産んでいたということです   おかあちゃんとは 言わなん
だ おかあちゃんは こっちにいててやもんな   昭和18年の秋 見送る こっちの母に
手をふって 正男は 出征していきました  線路のねきの家に 汽車のけむりの匂いが
していた頃のことでした>  


Posted by nakao at 12:16Comments(0)芸術