2010年12月23日

寺沢京子詩集

(寺沢京子詩集)  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(89)

 「窓から」  寺沢京子詩集  海風社 2003年出版 1429円+税
                    B6版 28篇 88頁

 窓に、もしも、言葉があるなら
 きっとこんな平和な心

      「ここまで」

<もっと こちらへ おいでよ
 
 手をのばして 引っぱられて

 もっと こちらへおいでよ

 でも だめ ここからは ここまでだよ

 かけもどったら また声がして

 もっと こちらへ おいでよ

 手をのばして 引っぱられて 

 もっと こちらへ おいでよ

 でも>

 日常のミステリアスは
 しかし
 思いやりと存在の奥域に
 充ちている

     「だれ」

<バス停に立っていたら 木の葉の影 足もとでふるえて

 ああ 風 見上げると こきざみにうごく うすみどりの葉
 なんて明るい空

 木の葉 たしかに ある 二本足でたって はりついて ビルの影に
 すっぽり包まれて すいこまれているもの だれ?

 見ているのに 見ているはずなのに どこにも みえない存在

 いったいだれ?

 緑色のバス だんだん 近ずいてくる たしかに近ずいてくる

 たしかに?

 乗るのは どこの だれ?>  


Posted by nakao at 18:30Comments(0)芸術

2010年12月23日

記憶

<記憶>  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(88)

 「記憶」  岩井洋詩集 竹林館 2005年 1500円+税
                B6版 144頁 41篇

 生きると言う
 大自然に抱かれた
 哀しくも限りなく透明な心
 一冊の詩集に込められた
 それは切実な願い
 くれぐれも
 一般受けする自意識分析に
 惑わされることなく
 かくなる透明を
 掘り下げてもらいたい
 一冊の詩集は
 生きざまであり作者の
 人生哲学だから

     「滝の風景」

<エレベーターの中で 昏れかかる滝の風景を語りかけると
 君は目をつぶったまま 静かにうなずいていた 

 レストランでは 窓から見える夕焼けは、 次第に闇に変わり
 ライトアップされた滝が見えている 

 昼間に、 間近に見た滝では 水しぶきの中 カモメ達が舞って
 いて 二つの国の間を わけなく飛び交っていた 

 私たちも レインボウブリッジを渡って 二つの国を行き来したけ
 れど 面倒な手続きと いくつかの質問が待っていた

 そして今 ここから見える風景は それらを丸ごと見ることが出来る
 滝は 自らの身を刻みながら 轟轟と流れ落ち 途切れない時間を
 刻んでいる>  


Posted by nakao at 18:02Comments(0)芸術