2011年08月15日

吉田定一詩集

<吉田定一詩集> 記 中尾彰秀          詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(21)

 吉田定一詩集  現代児童文学詩人文庫(2) 出版 いしずえ 定価1200円+税
                              2004年 193ページ+15ページ
                              幾つかの詩集とエッセイ評論

             「魚」

<小さな さかなが 川を のぼっていく 岩や 小石の すきまを ぬって。
 
 ヤマベ だろうか ウグイ だろうか。 

 柳の葉のような 青白い さかなが 光になり 影になって 泳いでいく。

 もう 目と 心だけになって さかなの 細長い 考えだけが 泳いでいる

 きらり 水面に いのちが はねる。

 この谷地の どこに どんな喜びが 待ちうけていると いうのだろう。

 さかのぼっていくと どこかで 川が 虹のように 空に かかっているとでも。

 それとも 色とりどりの花が どこか 水底で 咲いているとでも いうのだろうか。

 はるか 上流の 幽かな声に いざなわれながら さかなは 川を のぼっていく。

 山境は ぼんやりと 霞 たなびき 遠く せせらぎの音が ただよっている。

 せせらぎは さかなになり さかなは せせらぎに とけて。>

        森羅万象の奥域は本当に、我に等しく、宇宙は一体
        であることを、梵我一如という。
        そんな意味合いを、日々の暮らしや、ひょんなことで
        触れる詩に、あなたは見い出せるか。タオで有名な
        やさ詩人にあるいは過去の過去の老子の話で、成程
        解ったなどと言ったら、おまえは立派な阿呆だ。自らの
        体験を持つべし。

        欧米の理知や実存は、ついにこの境地に至らず、世界
        を知性で分析し、さびしさや孤独止まりにしている。
       
        しかし、何れの文化地平においても、屁理屈を超えた
        直観に基ずく宇宙の答えは、宇宙一体たる内なる光なのだ。
        魚は、答えである光を泳ぐ。
          


Posted by nakao at 16:54Comments(0)芸術