2009年08月10日
あなたの人生を至福にする百の詩集(16)
<あなたの人生を至福にする百の詩集(16)> 詩評 中尾彰秀 詩人・ピアニスト
「夕陽の光芒」 佐藤勝太詩集 竹林館 2000円+税
A5版、174ページ、50篇。太陽の周りを花が囲んでいる。驚くべし、表紙絵は著者の作。
2009年「POEMはなふりの賞」受賞。
一見軽いが、しみじみと考えさせるジョーク。
淡々と続く美しい語り口調。
戦中体験すらも、暗くに落下せぬ心のパワー。
時代を越えて保持する平和心。
生きている間、生きていく活力。
愛犬家。
私的感情は露骨に出さず、記録性も意識。
俗物性を隠すことなく、サラリとユーモラスに描く。
元気ある高齢者は、若者に最大の励ましになる。
様々の特徴持つ詩集は、光り輝く。
「佇む昭和」
<忘れていたふるさとに 朽ちた生家が風に鳴っていた 傾いだ物置の引き戸を こじ開けると
埃とともになつかしい体臭が かすかにまとい着く 一歩足を踏み入れると なげやりにしてきた
報いのように 蜘蛛の巣が闇入者をさえぎる 雨の日など 父はよくここで農具の手入れをし
藁草履を編んでいた どこかにまだ開けてない 夢を封じたパンドラの箱はないか 少年の日
探しあぐねた 秘密めいたものを捜していた 半開きの箪笥の底に 小学時代の通知表が隠れ
ていたり 手紙類の束の下に 黒ずんだ桐箱 ------ 功七級金鶏勲章の刻印が薄い 父の支那
事変応召は知っていたが ”武功抜群” の下賜とは初見だった 父は武勲の傷痕の脚を引
きずり 農作業に終始した 戦争の話などいささかも語らず 昭和のなごりを抱いたまま 四十数
年前に逝ってしまった 納屋にはまだ 昭和の埃が佇んでいた>
「夕陽の光芒」 佐藤勝太詩集 竹林館 2000円+税
A5版、174ページ、50篇。太陽の周りを花が囲んでいる。驚くべし、表紙絵は著者の作。
2009年「POEMはなふりの賞」受賞。
一見軽いが、しみじみと考えさせるジョーク。
淡々と続く美しい語り口調。
戦中体験すらも、暗くに落下せぬ心のパワー。
時代を越えて保持する平和心。
生きている間、生きていく活力。
愛犬家。
私的感情は露骨に出さず、記録性も意識。
俗物性を隠すことなく、サラリとユーモラスに描く。
元気ある高齢者は、若者に最大の励ましになる。
様々の特徴持つ詩集は、光り輝く。
「佇む昭和」
<忘れていたふるさとに 朽ちた生家が風に鳴っていた 傾いだ物置の引き戸を こじ開けると
埃とともになつかしい体臭が かすかにまとい着く 一歩足を踏み入れると なげやりにしてきた
報いのように 蜘蛛の巣が闇入者をさえぎる 雨の日など 父はよくここで農具の手入れをし
藁草履を編んでいた どこかにまだ開けてない 夢を封じたパンドラの箱はないか 少年の日
探しあぐねた 秘密めいたものを捜していた 半開きの箪笥の底に 小学時代の通知表が隠れ
ていたり 手紙類の束の下に 黒ずんだ桐箱 ------ 功七級金鶏勲章の刻印が薄い 父の支那
事変応召は知っていたが ”武功抜群” の下賜とは初見だった 父は武勲の傷痕の脚を引
きずり 農作業に終始した 戦争の話などいささかも語らず 昭和のなごりを抱いたまま 四十数
年前に逝ってしまった 納屋にはまだ 昭和の埃が佇んでいた>