2010年07月17日

白い道

<白い道>  記 中尾彰秀   詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(58)

 「白い道」  おしだとしこ詩集 2010年出版 翔の会出版 1500円
                    A5版 67頁

       「 名ずけられて 」

<記憶という名の鳥は その嘴に死をくわえている

 永遠のふかみへ放ってしまいたい黒鳥は 不穏を撒き散らしては また
 あらわれ 空を黒くそめて居座ったままで 自ら消え去ろうとはしない

 ためらいながら はじめて訪れた平和祈念館の ひろい芝生に身をなげだして
 見あげた空 何もおそれずに おおらかに見あげる 

 空の深みへと この身もココロも解けていく

 地球の裏側の はるかな海をわたってくる 風が愛撫してくれた やさしい手の
 ように 頬をつつんで吹きわたってゆき

 アイオロスの奏でる琴の音が この島から急にいなくなった 善良なひとびとの
 声になる

 生まれることは生きること 愛されるやさしいひとになれ 正実に生きよ と
 名つけられたものたちの確かな存在

 一人の老女が平和の礎の前に正座して 語りかけるように 祈るように
 刻まれた名を指でなぞっていた

 名ずけられたものたちが 追憶の糸をたどって戻ってくる 胸底で立ち止まった
 ままの影を抱いて あの老女は生きつつけるのだろう>

     人間の行為の中でも-------戦争--------は黒鳥のごとく、我々の
    潜在にあらわれる。しかし、人間を包み、人間を超えた優しさとして
    ある大自然---------空・風・自然の音・祈り・生命そのもの--------、
    それらは、人間の良心に基ずき名ずけられ、永遠に消える事はない。
    そして、「白い道」となり我々に示唆を与え続ける。
      


Posted by nakao at 17:26Comments(0)芸術