2010年01月13日

黄色い傘の中で

< 黄色い傘の中で >  記 中尾彰秀    詩人・ピアニスト・ヒーラー
                             ライフ&ライブコンサルタント

------- あなたの人生を至福にする百の詩集(34) -------

  「黄色い傘の中で」  山下俊子詩集 竹林館 1200円+税 A5版 108ページ 36篇

       日常の自然体の中に在るやさしさ、いつくしみ。
       大自然の摂理には、高齢と言う逃れられぬ厳しさ
       があるものの、それすらいつしか率直に受け入れ、
       人生と生命を味わい、安らぎへと向かう、勇気漲る
       詩集。ホームヘルパーを通じた、様々の感動を描く。

            「悲しい酒」

<開けられた雨戸から初夏の風が吹きこみ 壺に入った牡丹のはなびらが畳にちる
敷かれたままの布団を持ち上げると光がもぐりこむ 積もった綿ぼこりをそっとそっと
掃いてはこびだす     裏庭に花しょうぶの花が二つ三つ どくだみの白い花と青
い葉で埋めつくされ スズメを捕ったという笊が軒下にころがっている 
「悲しい酒」を口ずさみながらワンカップを飲んでいる盲目の女 わたしは二十歳のこ
ろに恋をしたの 彼は私の手にぬくもりを残して外国へ行ってしまったの もう帰って
いるかもね 四十歳をすこし過ぎた白く細い指がなまめかしく宙をおよぐ ・・・・・・・・
・・・・・・・ 雨戸を閉めると また来てくださいねとほろよい気分で送りだす ラジオの
声だけが生きもののように飛び交わっている くらやみへ帰ってゆくあなた>  


Posted by nakao at 17:43Comments(0)芸術