2011年05月08日
吉田定一「伽羅」
<吉田定一「伽羅」> 記 中尾彰秀 詩人・ピアニスト・ヒーラー
みんなの人生を至福にする百の詩集(13)
「伽羅3」 伽羅の会 編集 吉田定一 2011年 発行 書肆るふらん 定価1000円
かつてインドへ行った時
行ったと言うより
帰った気がした
大学でインド哲学を
かじっていただけに
どうやら私の潜在意識は
インドネパールにあるらしい
気の遠くなる様な時間の長い国
日本とは価値観のひっくり返った
大自然の牙をむく国
梵我一如たる高度な精神文化の発達した国
ちなみに
行くと帰るの微妙な心情は
日本においては
汽車によって運ばれる
行くと来るが逆転しても
迷いの中で宇宙の中心は
自らでありつつ
「ある駅」 吉田定一
<帰阪して上京する時、「行ってきます」と交わすいつもの別れの挨拶が、
いつの日にか「帰ってきます」と 逆さまの挨拶をしている自分に気付いて
なぜか哀しかった。足元から故郷がそっと離れていくよな気がして・・・。
生の坂道の途上にも、スイッチ・バックして行きと帰りが逆さまになって進ん
でいく駅があるのかもしれない。その駅がどのあたりだったのかと、今思おも
い巡らして余計に哀しさが募る。
その駅も判らないまま、俺はいく駅か乗り越して今ここにいる。帰るところばか
り増えて 行くべきところが消えていく。もしかしたら、帰る場所が 行く秘かな
処なのかもしれない・・・。
盛岡から山越えして宮古に行く山田線の峠途中に、区界という駅がある。汽車
はその駅で スイッチ・バックしてのんびりと滑るように走りだし、その車窓から
ひらりと一匹の紋白蝶が乗り込んできたことがあった。
ああ、 あの時の、 あの駅だったかもしれない、 おれの生が スイッチ・バック
して走り出した駅は・・・。 あぶなげに乗ってきた蝶は、 俺だったのだ。 あの
汽車は 俺の頭の中で、 何処へ行こうとしていたんだろう。>
みんなの人生を至福にする百の詩集(13)
「伽羅3」 伽羅の会 編集 吉田定一 2011年 発行 書肆るふらん 定価1000円
かつてインドへ行った時
行ったと言うより
帰った気がした
大学でインド哲学を
かじっていただけに
どうやら私の潜在意識は
インドネパールにあるらしい
気の遠くなる様な時間の長い国
日本とは価値観のひっくり返った
大自然の牙をむく国
梵我一如たる高度な精神文化の発達した国
ちなみに
行くと帰るの微妙な心情は
日本においては
汽車によって運ばれる
行くと来るが逆転しても
迷いの中で宇宙の中心は
自らでありつつ
「ある駅」 吉田定一
<帰阪して上京する時、「行ってきます」と交わすいつもの別れの挨拶が、
いつの日にか「帰ってきます」と 逆さまの挨拶をしている自分に気付いて
なぜか哀しかった。足元から故郷がそっと離れていくよな気がして・・・。
生の坂道の途上にも、スイッチ・バックして行きと帰りが逆さまになって進ん
でいく駅があるのかもしれない。その駅がどのあたりだったのかと、今思おも
い巡らして余計に哀しさが募る。
その駅も判らないまま、俺はいく駅か乗り越して今ここにいる。帰るところばか
り増えて 行くべきところが消えていく。もしかしたら、帰る場所が 行く秘かな
処なのかもしれない・・・。
盛岡から山越えして宮古に行く山田線の峠途中に、区界という駅がある。汽車
はその駅で スイッチ・バックしてのんびりと滑るように走りだし、その車窓から
ひらりと一匹の紋白蝶が乗り込んできたことがあった。
ああ、 あの時の、 あの駅だったかもしれない、 おれの生が スイッチ・バック
して走り出した駅は・・・。 あぶなげに乗ってきた蝶は、 俺だったのだ。 あの
汽車は 俺の頭の中で、 何処へ行こうとしていたんだろう。>