2012年04月28日

村野由樹詩集

<村野由樹詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(55)

 「渡し舟」 村野由樹詩集 銀河書房 2012年 A5版 53篇 143ページ
                              定価1800円

         淡々としたスケッチ風の言葉は
         心の泥を透過・浄化して
         常に未来を志向する

         「変わらない店」

<おおみそかの夜 駅前のたたずまいは 静かで いつものさわがしさは
 どこかに 隠れている あかい「ラーメン」という字と ゆげの立っている
 どんぶりの絵の看板は 人の背丈ほど大きくて どっしりと立っている

 らーめん屋のとなりの ジャズライブハウスは二十年以上も前から
 ずっと変わっていない 黒い木の天井の下 すこし 色あせたLPジャケット
 の前を ゆっくりと よぎっていくのは バド・パウエルのピアノで 1960年
 代のブルースのメロディ

 ピアノとベースとドラムが 初夏に歩いた 山道のことを たんねんに語り
 かけてくる 木影を歩いて 降りてきたところで のぞいた川は
 川底の石や 小さな魚がよく見えて 澄んだ緑色の水が流れていた
 そこで 生まれて初めて 泳いでいるのを見たヘビは 実に 早く川の中を
 泳いで行ったのだ>

        ここで描かれている変わらないものは
        ジャズ ブルース 川の流れ 蛇の習性
        思い出 まだ続くジャズハウス 白人至上主義に
        待ったをかけるブラックビューティの魂 
        あらゆる存在を包む静けさ 心臓の鼓動に近い
        ジャズのリズム

        それらが一つになって
        波動エネルギーを組成している
        いわゆるリアリズムは
        物的次元への魂の破滅であるが
        ここでは物を描きながら
        高き魂への志向が
        伺えるのだ
          


Posted by nakao at 19:21Comments(0)芸術