2013年04月06日

一紙(2)

<一紙(2)> 詩 中尾彰秀             詩人・ピアニスト・ヒーラー

 ありがたいことに
 初出一覧と著者略歴が
 白地のままの一紙を
 書棚の思わぬところで
 発見した
 ああありがたい
 ありにくいことだから
 本当にありがたい

 まだ本当にないのか
 あり過ぎて書けないのか
 どちらでもよいが
 白地部分に
 手を当ててみると
 彼方から押されるような
 弾みがついて
 スッと身体ごと
 引き込まれてしまう
 
 色とりどりの妖精のみ
 飛び交う平原
 日の出日の入りの
 同時にやってくる
 初めての岬
 静けさの封印持つ
 無数の旋律
 可能と不可能を
 一つに束ねて
 慈愛を醸し出す風

 本当に白地の
 豊かさを思う
 ひょっとしたらこの一紙は
 私に関するものだったのか
 もしもここに
 色々書きこんだら
 元も子もない

 春深し至り尽くせり透明の風

   


Posted by nakao at 17:37Comments(0)芸術