2011年10月21日

詩人三浦千賀子

<詩人 三浦千賀子> 記 中尾彰秀           詩人・ピアニスト・ヒーラー

       哲学的考察と抒情は友人である。
       真友どころか前世からの未来からの
       貴重な友である。
       さらに、内なる宇宙が伴えば、それを
       魂の友(ソウルフレンド)という。
       抒情が魂に響き得ることを
       証明するための
       雑感アンソロ(3)

    「白い軌跡」   三浦千賀子

<ガラスの外の 音の無い世界に 雪は降り積もる

 桜の裸木にも 山茶花の垣根にも ベランダの屋根にも

 雪は その白さや冷たさの内に すでに さみしさや孤独を
 抱え込んでいるのに 音もたてず 路面に吸い込まれていく

 空の高みから 尽きることなく つぎつぎと湧いてくる 白い
 花びらは つのる思いの深さのようでもあるが ことさら己を
 主張もせず 風の意のまま吹き寄せられる 

 ベッドに縛り付けられて 病院の窓からボタン雪を見た幼い日

 失恋の後の大雪の日 凍えながらどこまでも歩いた少女の日

 雪の世界は幼いころからの憧れ こころの軌跡のように 降り積
 もってきた白いもの 置き去りにされた者たちの幻影 私の心の
 奥に潜むシンとした世界

 部屋の中では ストーブの上の薬缶から 盛んに湯気が上がって
 いる>

      最後の手前節が、この詩のテーマ。雪の
      シンとした世界にある神がかりの奇跡に
      感銘している。奇跡は軌跡。幼い頃は体
      当たり、大人になってから意味が解る。
      しかし、内なる大自然のエネルギーは、決
      して潜んでなどいない。我々人間に、すさま
      じい至福をもたらしているこの現実に、私は
      ワナワナと震えている。命の声。無限の静け
      さ。白い軌跡。
  


Posted by nakao at 18:40Comments(0)芸術