2013年07月05日

永井ますみ詩集

<永井ますみ詩集> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(24)

 「永井ますみ詩集」 土曜美術社 2013年 1400円+税 174頁
              1972年「風の中で」以降、十冊の詩集を収録

     我々の日々は、野山の道を歩くがごとく
     すがすがしさを必要とする日々だ。
     縦横無尽の土着自然主義の詩群は、
     終わりを知らない。
     そもそも、人間のやるせなさは強意志の
     活力によって、目を覚ましたようにしゃんと
     立ち直す。大自然に生かされてある、人間の
     あり方を、改めて認識させられる詩の力。

     内なる神秘でなく、物質主義でありながらの
     自然主義は新たな歴史を作る。

         「馬酔木」

<樹と樹の間に かくれるように 生きている ゆすると 耳元で
 からころ音がして なつかしい白いちょうちん

 花を背負って帰る 山道のでこぼこ 肩口から匂う馬酔木の
 白いちょうちん 灯りをともして 風がいくよ

 はじめて出会って あなたの名前を知って 容れられない社会や
 世間を知って 私も まるいちょうちんになっていくのか
 花を背負って帰る 暮れていく野を惜しみながら いずれ帰る世の
 果ての 団欒を見たいと思う わずかな花を あかりにして>

                     小詩集「短詩妙」より  


Posted by nakao at 16:10Comments(0)芸術