2010年12月06日

鳥まばたけば

<鳥まばたけば>  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

    あなたの人生を至福にする百の詩集(82)

    「鳥まばたけば」 北岡淳子詩集 土曜美術社 2500円+税
                2010年 A5版 95頁 20篇

  日常及び
  大自然の内に在る
  生命の深層
  それは至福
  それは恍惚
  それはドラマ
  それは神話

  朗々と
  詩語は歯車のごとく
  絡み合って
  究極は
  静寂に包まれた
  祝祭となる。

  野山の果てへ行くのではない。
  今ここの日常、それが大切。

         「夏のうた」

<木象の並木は蝉時雨 七年もの間地中で溜め
 てきた生の解放に 蝉は我を忘れている  か
 っと照りつける夏の陽を弾き返す音のバリア
 すさまじい声明のどこかから 時おり はさっと
 蝉が落ちてくる 仰向けのまま細い手足を折るよ
 うにもがいて 生の領域を超えていく 近ずくと
 はげしく拒むので小さな草陰を残して離れるのだが
 翌日には乾いて転がって 気ずかずに踏んでいく
 足もある 

 短い生を終うものたちを抱いて 翳る六十三回目の
 夏 驟雨はふうろ草をたたいて足早に過ぎた 雨上
 がりの夏祭り 夜空を照らす祭音頭の賑やかな照り
 返しの向こう あれは北西の山腹の無名戦士の・・・
 ・・・・・ その間隙の静寂に引き込まれる そこに今
 しがた逝ったものたちが 私たちを振り返る間の空間
 があるのだろう きっとこの静寂が記憶を包みとり
 真の安らぎに導こうとするのだ ・・・・・・・・・>  


Posted by nakao at 17:03Comments(0)芸術