2013年11月04日

島田陽子遺稿集

<島田陽子遺稿集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(39)

 「じいさん ばあさん」 詩とうたと自伝  島田陽子遺稿集 編集工房ノア 
                          2013年 344頁 定価2500円+税

        随分と
        自分と違う傾向の詩も
        批評してきた
        そういったものは
        深さの点が物足りないが
        違うだけに斬新に
        思える場合もある
        故島田陽子氏の遺稿集
        「じいさん ばあさん」
        ぶ厚い立派な本
        平和を求めつつ
        魂は癒しに至らず
        見事に自意識の闇を闊歩する

        「たまたま そこに」

 <いつもと変りなく 駅のホームでひとは待ち いつもと変りなく 電車が来た
  突然 ひとりの男がホームから落ち すぐさま異国の若者が線路にとび降り
  つずいてもうひとりが・・・・・

  たまたま そこに居合わせただけで ひとは不幸な主役となり 息を呑む観客
  となる 演目も台本も知らされずに

  あの日も いつもの朝と変りなく 川は静かに流れ 超高層ビルの窓は陽にきら
  めいていた 惨劇がひそかに用意され 見えない幕が既に上がっているのも知ら
  ず 

  わたしたちは許されていない あの朝から目を外らすのを 多くのものを失って
  なにかをすること なにかをしないこと ゆれ動きながら足場を求めた いずれの
  罪をも荷わずにはすまなかった 乾いた貧しい土地に住むひとびとの いのちを
  しぼる呻きが聞こえる

  祈りは届かない 言葉は届かない 闇は深くなるばかりだ>  


Posted by nakao at 15:05Comments(0)芸術