2011年02月01日

鎮魂詩四0四人集

<鎮魂詩四〇四人集>  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(99)

 「鎮魂詩四〇四人集」  鈴木久比佐雄・菊田守・長津功三郎・山本十四尾 編
                コールサック社 2010年

 詩の愛好家は、俳句・短歌・小説そして音楽に比して、かなり少ない。その理由は
 難しいから。なぜ難しいのだろう。詩は独自性が強く、かなりの能動性がなければ
 理解できないからだ。逆に言えば、人間として、世界に一つの花のごとく、本当の
 生き方は何かを知る為の手段にもなる。

 もちろん、危険性もある。知の力で言葉は書けるから、魂の奥域のほんまもんに至
 らなくとも、やたら書くことができる。それを、見抜くのは読者の目であり、心である。

 このアンソロジーは、全国の四〇四人の詩人達の、この世界への鎮魂を込めた力作。
 便宜上、詩のジャンル分けをこの書はしているが、それほど意味のあることではない。

 特に印象に残った一作を、上げてみよう。

                「校舎」     真田かずこ

<なして壊すん 80年も使うてきたもんを 壊(め)いでしもうたら もう 泣いても喚いても
 元にもどりゃぁせんのに 水害のたびに腰まで水に浸かって おかあちゃんらぁが掃除し
 に来んさったげな そいだけぇ長い廊下が波波なんだぁ 雑巾掛けなんか もうちゃん面
 白いんで 顔が映るほどぴかぴかだしなぁ 原井小学校の校舎はなぁ 中庭かこんでぐる
 っと木造二階建で 正面玄関のずっとまっすぐの奥 渡り廊下で中庭つっきてゆくと講堂
 いっつも重たい木の戸が閉まっとって 特別の日だけ入れるんで うちはあの重たい戸が
 好き みーんな角が取れてすべすべしとって ここにも顔が映るん知らんかったろう 教室
 の戸も敷居も窓も腰抜も 足型にすり減ったぶ厚い階段も 年輪や節が浮き上がったつる
 つるの手すりも好きだけぇ 大階段の踊り場にぁいろんな陽が差し込むんでん 赤いカンナ
 音楽室からよう見えたなぁ 理科室の戸棚に骸骨があるん知っとろう 小使い室やら宿直
 室に 幽霊でるんだげな お便所にもうちらのとき児童千人もおったんで なして壊すん
 なして>  


Posted by nakao at 16:50Comments(0)芸術