2012年11月10日

深夜

<深夜> 詩 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 とても静かな深夜こそ
 とてつもなく賑やかなことに
 驚かされる

 昼間全く耳に入らなかった
 掛け時計の音
 一秒ごと意味を持ちつつ
 格別に大切に時を刻む
 その神聖さに
 背筋が伸びる
 もう少し寝る前の
 宇宙の粒子の泡立ちを
 知りたくて

 夜に強冷となる冷蔵庫の音
 我々人間の文明は
 誇らかに胸を張るのだが
 ひょっとしたら貪欲の穴に
 はまっているのではと思いつつ

 闇にまぎれて頑張る
 川向こうの工場の低周波音
 川越えで何でも許される訳ではないのに
 住民の無関心の波に乗って
 壁を突き抜けるのは
 彼方の森の慟哭だ

 ずうっと離れた国道を
 疾走する暴走族
 人に聞かせてナンボかな
 日の出に向かってあと百キロ
 朱色に染まった心は
 りんりんりん

 忘れた頃鳴り出す救急車
 突如やってくる人生の区切り
 何があろうと生死超え
 魂の奥に引き込まれ
 微笑浮かべよう
 明日の復帰へ向け

 時たま鳴るお腹の音は
 何かの楽器の様だ
 体内の森のオーケストラ
 指揮者は不要
 ひたすら中心の光を
 抱くのだ

 そして私は
 五体でで直に感じる
 地球の胎動
 柔らかい 暖かい
 みなもと
 深夜とは
 何もない賑やかさ

 
   


Posted by nakao at 16:55Comments(0)芸術