2010年12月16日

夕陽の光芒

<夕陽の光芒>  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(83)

 「夕日の光芒」 佐藤勝太詩集 竹林館 定価2000円+税
                     2008年出版 A5版 175頁 49篇

 生きると言う当たり前には
 一体何がある
 当たり前の前に
 神々しく立ちはだかる大自然
 地球と言う大自然

 忘れてはならない
 生きると言う当たり前の
 実は奇跡の
 そのど真ん中で
 人間は戦争を起こし
 殺し合いをし
 原爆を落とし落された
 未来永劫残る事実に
 決して目をそらすことなく
 真摯に晩年を生きる詩人の
 魂は優しくも熱い

        「1945年8月6日の朝」

<通学路の頭上から 紙屑の灰が降ってきた 薄曇りの西の空から
 黒あげはの羽ばたきのように 少年たちの肩に止まった 

 きのうもまた どこかの都市が空爆されたか いまさら驚くこともない
 戦況だった 爆音も悲鳴も聞こえないが 国土の焼野原は広がって
 いた 

 教室の窓辺に凭れて 誰かが ひろしまに新型爆弾が投下され 強力
 な光線が 人も街も一閃で焼きつくしたと ひそひそ語り合っていた
 それまで無邪気に戯れていた 生徒の動きがいっせいに停まった

 玉砕や特攻 艦隊の全滅 東京 大阪などの焼土は 聞いてはいたが
 一発の爆弾で隣のひろしまが灰塵とは 生徒たちの思考が苧立した
 本土決戦に備えた中学生の眼差しが 閉じられて教室の隅に立てかけた
 手作りの竹槍から目をそらして 机に伏せて始業を待った>

  


Posted by nakao at 18:23Comments(0)芸術