2012年01月10日

釣部与志新詩集

<釣部与志新詩集> 記 中尾彰秀            詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(44)

 「けもの道 風の辻」  釣部与志詩集 書肆山田 2011年 A5版 139頁 32篇

      言葉による、味ある表現を、詩であるというなら
      この詩集は一つの成果を遂げている。
      一行一行一字一字が、手を抜くことなく
      緻密に独自描写し得ている。
  
      いかにも生きるということの実態は
      そうかもしれない。
      見方によっては、生命を人生を左往右往する
      自然主義的な思想があるかもしれない。
      精神や魂の志向性を
      深化単純化してほしいという気持ちは
      むしろ私の祈りである。

           「白きつね」

<赤い鳥居の柱列が途切れて 奥宮の裏からのぼる行者道 白書に幾人の人が
 通って行ったのだろう 夏草が大地に残る人の踏痕を隠している 踏んでも草叢
 こぎいっても青岬 燃えかけた蝋燭の余熱が残っている 獄の分祠には瘴気が
 ただよって この静寂の野で出逢いがしらの {けもの} 百年狐が奇瑞と豊穣の
 証しに 己の霊力のこもった白い毛魂を授けていく

 一瞬に己の欲望を手にする不思議の力 地位と名声を望み飢えないでいる守戦
 の欲 えのころ草の根元に落ちていることを覗い 痛んだ膝も気にしないでいちず
 に歩く 行けども行けども見つけられない我か行者

 体の芯から流れ出る慾が涸れずに汗と下たる 生気を失いかけ ひと椀の・・・・
 ・・・・・・・・                              ・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・

 ぬれた執着の帽子をとり新しい手拭いでふくと 涼やかな風が 身体を吹きぬけて
 いく>
  


Posted by nakao at 18:33Comments(0)芸術