2013年12月12日

鳥巣郁美詩集

<鳥巣郁美詩集> 記 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(46)

 「埴輪の目」  鳥巣郁美詩集 編集工房ノア 1994年 2500円+税 
                      A5版 128頁 62篇

      闇に見出す躍動は
      心の重力によって鈍く光る。
      それは視点そのものが
      既に死を前提とした
      埴輪となっているから。
      花は花そのもの
      死をはらんで
      闇を貪っているのだ。

      ねじれ くぐもり しらしら 埋もれ 
      枯れ色 うめき 刹那

      それを世界の宴として。

          「花群」

<細枝のけむる裸木の奥に 拳の蕾が白い
 鳥のこだまやこもりあう大気をめぐらせ
 いっせいに噴き上がるいくつもの一輪
 遠ざかる枝先をかすめて
 一本の白い花群は炎となってゆらめき 
 色褪せた枯色を載り拓いている
 肌寒い風のまにまに誘われる宴の
 ぐらりと揺れ戻す白炎のありか
 呼び戻した地霊の疼き
 目覚めた繭から羽化するごとく 
 咲き出る時刻>  


Posted by nakao at 17:45Comments(0)芸術芸術