2012年08月17日

谷川俊太郎詩集

<谷川俊太郎詩集> 記 中尾彰秀             詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(73)

 「私」  谷川俊太郎詩集  思潮社 2007年 A5版 38篇 129頁 1500円+税

        [「詩人の墓」へのエピタフ]

<生まれたとき ぼくに名前はなかった 水の一分子のように だがすぐに母音が口移しされ
 子音が耳をくすぐり ぼくは呼ばれ 世界から引き離された

 大気を震わせ 粘土板に刻まれ 竹に彫りつけられ 砂に記され 言葉は玉葱の皮 むいて
 もむいても 世界は見つからない

 言葉をなくして そよぐ木々になりたかった 十万年前の雲になりたかった 鯨の歌になりたか
 った 今ぼくは無名に帰る 目と耳と口を泥にふさがれ 指をもう星に預けて>

      想像力は元初の生命に至ろうとするが、
      ついに、想像力の枠を超えてはいない。
      しかし、その試みは、我々人間の知的
      意識の限界を認識する天才のものであ
      る。有名詩人になってしまうと、そこに止
      まってしまう。誰も言ってくれないのだ。
      指どころか泥をも含めて、梵我一如なる
      真実があることを。それを波動と言う。



  


Posted by nakao at 11:54Comments(0)芸術