2009年10月22日

ラス・パルマス

<<< ラス・パルマス >>>  詩評 中尾彰秀  詩人・ピアニスト

  あなたの人生を至福にする百の詩集(24)

「 ラス・パルマス 」  佐古祐二詩集 竹林館 2300円+税
                        出版2007年、A5版、44篇、149頁

      感情のきびの巧みさ、社会上の批評の妥当さ、地球意識の美しさ
     何れをも古典的文体で描く。そして、ここでは、それぞれを差し置いて
     、生死の狭間に浮かぶ、宇宙の真実たる波動・癒しの詩を選びましょ
     う。

              「 十月の空 」

     <長の入院から解き放たれた 
          ある晴れた日のこと
             飛行機雲がひとすじ伸びている
                 いずれは
                    ほどけて消えるさだめなのだが
                       いま
                     それはたしかにぼくの頭上にある
                   木漏れ日ゆれて
                 金木犀の香が運ばれてくる
               ぼくは気ずく
             ほんとうは
                ほどけて消えるのではなく
                   この美しい世界に
                      とけこんでいくのだと
               
              飛行機雲がひとすじ伸びている>

  なお、表紙絵「接吻」(クリムト作)は、生命と愛の美しさ華麗さを、見事に表す。
表紙帯にはこうある。「生と死のはざまから聞こえる 激しいスタッカート そのひびきが
空間をきりひらくと 見えないものが見えてくる  それは 時の舞踏であり 詩人の愛と
言いきってよいだろう ことばに肉体を持たせようとする意志は これらの詩篇の卓越した
るものだ」
 さらになお、2009年世界の「POEMラス・パルマス賞」を受賞。  


Posted by nakao at 16:09Comments(0)芸術