2011年12月07日

下村和子新詩集

<下村和子新詩集> 記 中尾彰秀            詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(36)

 「いろはにほへど・・・」  下村和子詩集 土曜美術社 2011年 2500円+税
                          A5版 91ページ 23篇

        下村和子の詩は、いよいよ熟成を極めつつある。
        これまでの様に、わざとく重力に翻弄されて、心の
        限界に至って初めてひらめく状態から、かなり自由に
        ひらめくところに来た。未だ、屋久杉にこだわったり
        藍にこだわったり、青にこだわったり、が残るものの。
        本質は、こだわりではなく、こだわりを超えた無限の
        魂の静けさである。

        今ここにある、日常の、遥かなるもの。それを、詩によ
        って捉えようとすること自体、詩の限界である。詩も媒
        体だから。一切の媒体を超えたものによって、奥深い
        本質が得られるのだ。

           「いろはにほへど・・・」

<見える家が消えて 見えない家が建っている 肌で確かめ合った人が去って
 気配になった人が 樹の影に座っている あれやこれや失って あの人この人
 の名を数えながら 私は微風の中に居る

 樹は 生と死の出会いの宿 鳥がやってきて私を導いてくれる 使い慣れた言葉
 を捨てて 聞こえてくる曲に聴き入ると 宇宙の使者が近ずいてくる

 泡沫がしばらく漂って やがて滅してゆく 生まれて くるくる回って 消える 無常の
 いのちの奥に 永遠の生命の河が流れているのだと 先をゆくなつかしい男からの
 メッセージを 鳥がふわっと落としていく 形を変えて組み込まれていくのだから 案じ
 なくてもいいと 首頷いて ほっと深呼吸をする でも ・・・・・・・・・・・・ 私は
 
 陽が輝き 百を越える色の花が乱れ咲き 水飛沫がはねる この里が好き 今という
 時間 歩いて 歩いて 此処を楽しみたい 花もまた 私と同じ束の間の命 与えられた
 時間を 声を合わせて 歌いたい>

  


Posted by nakao at 17:49Comments(0)芸術