2013年11月06日

中尾彰秀詩集「気踏歌」

<中尾彰秀詩集「気踏歌」> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(41)

 「気踏歌」 竹林館 1994年 定価税込2300円 A5版 28篇 104頁

        「まどろみ」

<ありかけて ありかけようとする 風景の間合いの空虚 
 人間はじまり 生きとし生けるもの 死にとし死せるもの
 みな帰りゆく

 そのままで まどろむ 言葉の骨格の繋ぎ目踊り 隠された秘法
 受け継ぎ 袋一杯の身体60兆細胞よ

 内へ内へと近ずけば どんなものも持っている あえかな祈りの形は
 もう地球に融け融けゆき 祈りそのものより その場所全体が 
 まどろみながら その都度 粉微塵になって 瞬間で永遠の祭りを
 している命だから なんと無心に私は 日本和歌山市和歌浦水軒口
 かつてあった海に面する 田んぼの畦道の 遥か一直線縫い目を
 自転車走らせることか>

       具体性がないのかなと
       読み進めると、最後に
       自転車乗っている、と
       書かれている。
       正しく、その瞬間を永遠
       のごとく掘り下げた一篇。
       これが本当のリアリズム
       であり、存在の奥に網羅
       された森羅万象と一体化
       する日常の奇跡である。
        


Posted by nakao at 16:14Comments(0)芸術