2014年05月12日

津坂治男詩集

<津坂治男詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(81)

 「津坂治男詩集」 日本詩人叢書 近文社 1989年 定価1000円

      戦争という
      極端な体験が
      正しくカルマとして
      日本人の魂に残る。
      確かにそれを
      ブラックホールと
      言えなくもない。
      しかし忘れてならないのは
      高度経済成長は
      自然破壊と共に
      業欲という
      心のブラックホールを
      持たらしたということ。
        
      現在の日本の政治の長が
      過去のかくなる幻想を持って
      一部のシステムにに儲けさせ
      税金の無駄使いそのままに
      であるならばそれは
      日本のみならず
      世界の不幸である

      どうやら
      深くも要領得て
      表現の妙あるクリアな次元
      この詩人は禅の心得が
      あるようだ。

      「ブラックホール」

<冬の夕暮れだった お使いから帰る僕と弟の真上を 柿色の火の玉が飛んだ
 墓場のある 西の 松木立をすり抜けて おたまじゃくしの尻尾を引きずりながら
 日本は戦争に負けかけていた 兄も火の雨の中で戦っていた 去年松の木に懸
 った扇たこを取ろうとして 電線に触れ 落ちて死んだ 武夫の魂やと 弟が震えた
 埋葬した死体の脳や脊髄から出た燐がかたまり発火したんさ と断定しかけて 僕
 もびっくり 気温は五度もない十二月末 そんな二人を文字通り尻目に しばらく目
 の前で一服したあと 東の寺越しに舞いつつ消えた そういえば武夫がよじのぼっ
 たのもあの寺の木 飛び方も 扇タコみたいに ふわふわふわっ と・・・・・

 あくる夏 町全体に火が降りかかって 木も寺も地の下の死者まで燃えた・・・・・・
 繁栄という 世界を圧しならす所業の中で 五百キロ向こうの弟も見ているか あの
 火の玉の乱舞扇タコの夢をとうに焼き尽して 広がる世紀末のブラックホールを・・・・>



Posted by nakao at 17:37│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。