2014年05月15日
てつがくの犬
<てつがくの犬> 記 中尾彰秀 詩人・ピアニスト・ヒーラー
世界を至福にする百の詩集(83)
「てつがくの犬」 武西良和詩集 土曜美術社 2014年 1800円+税 A5版 30篇 100頁
全編犬に関する詩。
自らが犬であったり、狛犬を観察したり、
過去の思い出であったり野良犬、夕暮れ犬
泥犬、草犬、犬の影、果ては「犬のおまわりさん」。
そのどれをとってもユニークで、納得できる寂しさを
抱えている。
確かに、飼われ犬であっても、哲学者のような顔つきの
犬は多い。人間の持つ何かの情念を受け継いでいるの
だろうか。
「春の絵の具」
<緑色を水でとかして しっぽの毛でふりまくと春が ささやきはじめるだろう
川の水はまだ 冷たく 重い
木の枝にポツポッと置かれた絵の具は 明るい光の中ですぐに乾き 緑の水をほしがる
緑が濃くなり急速に春が 夏に向かっていく 色を置くたびに早春の水音が -----シーッ。
と言って遠ざけようとする
川の堤の水たまりで 泳いでいる水鳥たちが 絵筆になろうと羽を洗いはじめる
岩蔭にいる水鳥たちは 寒さに閉じ込められたまま羽を広げられず 乾く緑を知らない
ぼくは絵筆をふりながらぐいぐい
鼻が急がす -----薄い春を 濃くしようぜ。>
世界を至福にする百の詩集(83)
「てつがくの犬」 武西良和詩集 土曜美術社 2014年 1800円+税 A5版 30篇 100頁
全編犬に関する詩。
自らが犬であったり、狛犬を観察したり、
過去の思い出であったり野良犬、夕暮れ犬
泥犬、草犬、犬の影、果ては「犬のおまわりさん」。
そのどれをとってもユニークで、納得できる寂しさを
抱えている。
確かに、飼われ犬であっても、哲学者のような顔つきの
犬は多い。人間の持つ何かの情念を受け継いでいるの
だろうか。
「春の絵の具」
<緑色を水でとかして しっぽの毛でふりまくと春が ささやきはじめるだろう
川の水はまだ 冷たく 重い
木の枝にポツポッと置かれた絵の具は 明るい光の中ですぐに乾き 緑の水をほしがる
緑が濃くなり急速に春が 夏に向かっていく 色を置くたびに早春の水音が -----シーッ。
と言って遠ざけようとする
川の堤の水たまりで 泳いでいる水鳥たちが 絵筆になろうと羽を洗いはじめる
岩蔭にいる水鳥たちは 寒さに閉じ込められたまま羽を広げられず 乾く緑を知らない
ぼくは絵筆をふりながらぐいぐい
鼻が急がす -----薄い春を 濃くしようぜ。>
Posted by nakao at 18:34│Comments(0)