2014年05月17日

大掛史子詩集

<大掛史子詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集[84]

 「花菖蒲」 大掛史子詩集 2003年 本多企画 2000円+税 A5版 124頁 20篇

       美しき抒情は哀しみを孕んで増長する。
       言葉はかくも余韻を持つのだ。
       余韻に溺れながら美を鷲掴みに
       音楽奏で静かに踊りながら。
       そして 何よりも悶えながら。

           「序」

<花のくにから ただひともと遣わされた 気高くもみずみずしいもの 内ふかい旅がはじまる
 ふたたび青い花芯の奥へと ことばはひるみ ことばはまどう いかにうたおうか いのちみつる
 青を どれほど深めてかえしたらいい 花のくにへ>

           「春の裸形」

<いま陽光から生み落とされたのだろう ほっそりと浄らかな裸身が 萌えはじめた草の上にある
 護り手のように枝を広げた重い木立と はるかな奥行きをみせるみどりの原野の手前 仰向けに 
 右肱を立て 左腕はゆるやかに虚空をさぐり 固い乳房は陽の戯れにも恥じらいおののく 草に
 流れた金色の巻毛の中の 柔らかなうなじと意志を持つ唇は まっすぐに空に向けられた目ざし
 と共に 天への畏れにみちて疎ましく ・・・・・

 物語はいつ始まるのだろう・・・・・・・・やがて白い幻影の手に引き渡される日を 移ろいやまぬ
 相貌の一瞬の煌めきにも似て 甘美である筈の約束の物語は・・・・・」
  



Posted by nakao at 18:22│Comments(0)
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