2014年08月19日

弘津亨詩集

<弘津亨詩集> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 地球を至福にする百の詩集(6)

 「雨がふる日」 弘津亨詩集 詩学社 2004年 1500円+税 A5版 30篇 104頁

       舟というものは
       我々の意識も無意識も乗せる
       つまり生死関わらず
       乗せるから
       あの世への航路も
       乗ることになる
       そして船は美しい
       多くの現代詩は
       やたら意識分裂をさも詩であるごとく
       描くが
       それを超えて
       生死含める器としての
       舟は哀しくも美しい
       ( )は中島みゆきの歌
       何がしに付けて雨の多い詩人は
       雨男なのか
       雨は浄化でもある

       「舟」

<あなたが逝った日 世界は雨にうたれていた 病室の窓も家の屋根も そして
 あなたの父と母も あなたのいた場所にぽっかりと大きな穴があき そこに雨は
 容赦なく降り注ぐ

  (わたしたちは二隻の舟   ひとつずつの そしてひとつの)

 あなたと一緒に聞いた歌 悲しみを和らげるものが何もないとき 
 その歌をくりかえし聴く

 歌は一本の杖のように指し示す 雨に煙るかなたの海を きょう そこは
 雲で厚く閉ざされている

 ある日 あなたは 厚い雲を割ってひろがる青空になる あなたが青空であるとき
 悲しみに抗って 父と母は ふたたび白い帆を揚げるだろう あなたは逝っても 
 なお
   (ひとつずつの そしてひとつの)舟なのだから>



Posted by nakao at 17:54│Comments(0)
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