2009年07月29日

あなたの人生を至福にする百の詩(8)

< あなたの人生を至福にする百の詩(8) >

「 母の家 」     池田瑛子詩集   土曜美術社 2000円+税 2001年発行

  <蓮>
遙かな 時の果てから うつくしい暗号を受けとめて 蓮の花が咲いている  悲哀の沼に漂い
絡むかなしみの水藻を分けて 祈るように 天に 高く さしのべる  あこがれ  肉体を脱い
でいった魂も 夢をみるのではないか ほそい坂道を下り 竹林に抱かれた蓮池のそばを
カーブする一瞬 魂の夢の中へ
  <博物館で>
ふと 何かが 囁く ---------待っていたのですよ  太古の森に そよいでいた樹 もっと遙かな日
海辺に遊んでいた貝 ありとあらゆるいのちの 果てしないつらなり 魂のふるさとから届く やわ
らかいひかりが 心のなかの忘れられた原野を 呼び覚ましてゆく
  <あざみ>
夜の崖に 流れやまない水の響きを 聴きながら 痛みは 無数の炎をあつめて 息をひそめてい
た   もうすぐ 風が吹き過ぎるだろう

  北陸海辺に暮らす詩人。哀切さは消えることのない海鳴りから来るのか。存在の奥域の
 魂のふるさとからか。子守唄のごときやさしき歌。懐かしきところに帰る詩。森羅万象のつな
 がりを思い出させる言葉。魂の透明さと静けさを維持する強靭な精神力。時空を超えて見守
 ってくれている亡き母の認識。西欧の分析を遙かに超えた次元。現代詩のとてつもなく大き
 な成果がここにある。 (詩評 中尾彰秀)


  



Posted by nakao at 13:23│Comments(0)芸術
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