2009年08月05日

あなたの人生を至福にする百の詩集(11)

<あなたの人生を至福にする百の詩集(11)>

  「空の道」    大堀タミノ詩集   編集工房ノア 1600円+税

 最近では珍しい和紙の表紙。存在の奥域のあわいを表出する日本古来の風情は、詩に見事に合
っている。詩語に触れる前からの感動。
< 空の道 >
「見上げる空に 満開の桜 八方に伸びる枝に寄りそう 花ばなの 枝の道 標をたよりに 此処まで
来る 錯統する枝の 息詰るあらがいを目の隅に収めながら 青白い静脈の先端で 秘めやかに 方
向をまさぐっている 芽ぶきのさきに陽がとまり 薄紅色の 血が溢れる じっと みつめる 空の道
おおらかに 大気が往き交い そこに温かい陽光と 風の戯れる 愉しげな談笑がきこえてくる此処か
らなら どこにでも 出かけていくことができる ちょっぴり 空に浮いて」

      今、ここに幽玄。幽玄は有限ではない。無限である。これは決して 暗さ 老い ではない。
     むしろ、活力ある若きエネルギーである。古来芸術はそういうものであったし、今後もあり続
     ける。いや、芸術でなくたって、詩でなくたって存在はそういうものだ。松尾芭蕉を芸術家とし
     てより、普遍性を見出そうとする人間として見るのと同じく。脱日常でも、非日常でもない。日
     常が、優しく美しく妙なる無限の世界なのだ。詩編「空の道」の、単純な奥深さに乾杯!
                     (詩評 中尾彰秀  詩人・ピアニスト)






Posted by nakao at 14:54│Comments(0)芸術
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