2009年08月08日

あなたの人生を至福にする百の詩集(14)

<あなたの人生を至福にする百の詩集(14)>   詩評 中尾彰秀  詩人・ピアニスト

     「形象の海」   福井久子詩集  編集工房ノア 2520円

 映像的にも美しい詩。日々の何気ない事に、恍惚とした悦楽の瞬間を、円やかな言葉で紡ぐ。
あ、祝祭の様な。永遠の様な。イコール、いのちの本質の様な。集中、どの作もかくなるテーマと
なっている。言葉が、きっちりと役目を担い、枠からはみ出すことなく目的に至る見事さ。人生それ
もまた、楽しからずや。1999年出版、A5版、111ページ、31編。

    「夕暮」
<小舟にのって 波に揺れていると ひそかに変化する水魂が 私の体を前にはこぶ 次の波に
移す瞬間 どこかで裂け 崩れ 霧散しそうで なお繋がりを残し 永遠性を装う 波間にのぞく倦
怠をまきこんで 海を一枚のマンダラに仕立あげる 風は膚に冷めたく 小舟に端兆のきざしはな
いが いま、空は紫紅色 生起する波は波を押し 波はまたひとつの波に触れ 幾重にも交錯する
黄金色の諧調 水の壁に抱かれる小舟をのせて 海は水平線に円を閉じようとする   大きな
太陽が沈んでいく>




Posted by nakao at 17:00│Comments(0)芸術
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