2009年08月17日

月辺境

<<< 月辺境 >>>    中尾彰秀第3詩集 森羅通信の会 800円

 出版1980年、A5版、14篇、55ページ。ブルーの表紙は、とても美しく海のイメージ。
テーマは海であるものの。
   「月」
<想い出を 修復するように 緑の秋雨の降り注ぐ夜 私は むしろ 一切を忘れ去る為
渚を歩くことにしている ゆっくり体液を流しながら ゆっくり体液を混ぜながら 雨は大地
に伏すと 哀しみそのものとなる 砂となり 草となり 海となり そして海の香となる
抱いてみようか なめしつつ 掬うように 既に緑に染まった両腕で 既に緑に染まった両
眼で たとえば かすかにわかる貝殻や 石ころや 漂着した板ギレや 風化に任せた白
波を  ひとつひとつ 拾っていくと 例えば 捨てられた鞄や ひょっとしたら何かの死体を
見つけ 遙かな流星の破片や 鳥の羽毛 ひとつひとつつなげていくと ついには月へ 
辿りついてしまう 想うに それらのものは 月の物なのだろうか  満月の夜は ことさら
瞬間移動を繰り返す私 ほらほら いくつもの渚が 拡がってしまうんだ この掌にしても
血液のゆっくり増量するような気のする日 すぐ目の前にお月さまが ふっと我に返って
生も死も一体になっているような 悔しい程の快楽で>

  30年前の作。とても懐かしい。ぎこちなさはあるものの、哀しき詩の花が咲く。
 いつの日か、(6年後ぐらいかな)波動エネルギーに至るきざし持ちつつ。言葉は
 言葉で止まらず、深め拡げられる魂のものなのだ。

   <月辺境>   中尾彰秀詩集

(購入法) 郵便振替 森羅通信の会  00940-4-29604 定価800円+送料200円



Posted by nakao at 15:00│Comments(0)芸術
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