2009年09月25日

きのくに詩話会(2)

<<< きのくに詩話会(2) >>>  記 中尾彰秀  詩人・ピアニスト

 「きのくに詩話会(2)」は、2009年8月20日(日)、タオハウス1Fにて。
飯島和子詩集「汽車のけむり」(編集工房ノア、定価2000円)を扱いました。

 日本国内で、戦争を体験された詩人は、日々の暮らしの中で社会を人間を見つめ
、平和な心を貫いている。なを、ご高齢となっても恋心は衰えることなく、読者にやさ
しい風を吹かせている。

      「汽車のけむり」

<八尾に 汽車が走っていた頃 線路のねきの 植松の村に きぬ子は ひとりで住
んでいました 大阪で開業している歯医者の だんながいました 時折 たずねてくる
だんなと御飯を食べる時分には きまって ごっと ごっと という汽車の音と けむり
の匂いが 窓から はいってきました しあわせといえば しあわせなくらしやったんで
す やがて きぬ子は男の子を産みました 正男と名付けられたその子は 生まれると
すぐ 歯医者の家に引きとられて行きました しばらくして きぬ子は 遠い島根に帰っ
て行きました ふわり ふわり 汽車のけむりを残して 帰って行きました 青年になった
正男は 兵隊検査の前に 自分を産んだ母に いっぺんだけ逢いに行ったという きぬ子
は 嫁入りして 子どもを三人産んでいたということです   おかあちゃんとは 言わなん
だ おかあちゃんは こっちにいててやもんな   昭和18年の秋 見送る こっちの母に
手をふって 正男は 出征していきました  線路のねきの家に 汽車のけむりの匂いが
していた頃のことでした>



Posted by nakao at 12:16│Comments(0)芸術
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