2011年08月06日

門田照子詩集

<門田照子詩集> 記 中尾彰秀         詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(18)

 「終わりのない夏」 門田照子詩集 土曜美術社 2007年 
             A5版 26篇 127頁 定価2000円+税

 傷ついた過去の現実を身じろぐことなく描き、
 ぶ厚い魂の抒情を身に着け、迷いながらも
 今を逞しく生きようとする、活力漲る詩群。
 
        「雷鳴」

<落雷は近かったようだ 筋向こうのテレビアンテナが煙り
 雨の街路が騒々しい 灰色の天を二つに裂いた稲妻が
 わたしの手から菜切り包丁を落とさせた 流し台の前に
 立ちすくんだまま わたしは動けない あのひとのアパートを
 訪ねていた あの日 束の間 若かったわたしは 跳ねたり
 反ったりする 一匹の青い魚だった 外は激しい夕立

 捌かれて平たくなってゆく魚を 突然 貫いた雷鳴 閃光は
 通り道の電柱を縦割りにして轟いた

 瞬時 わたしたちはお互いから飛び退った あのひとは頬を
 引きつらせて身繕いをし わたしの手は震え胸先で練れる
 雷鳴がむき出しにした あのひととわたしの ひ弱な愛の骸
 打ち砕かれた魚は生臭くみすぼらしかった

 足元で刃物が匂い 遠退いて閃く稲妻の危ういうつくしさ
 駆けつけてきた消防車が ボヤを消し止めて町内は静まった>

 なお、ドラマチックな表題が多い。
 「万華鏡」「暴走の果て」「遥かな自転車」「涙壺」
 いかに日々の生き方に、魂を入れているかがうかがえる。




Posted by nakao at 18:12│Comments(0)芸術
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