2011年12月07日

横田英子新詩集

<横田英子新詩集> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(37)

 「川の構図」  横田英子詩集 土曜美術社 2011年 2500円+税
                    A5版 143ページ 35篇

        抒情の本質を貫きながら、哀切なる言葉が主張する。
        神秘を外界に見る理知なる実存に閉じ込められた魂。
        差し込む外光をこよなく愛しつつ。憧れつつ。
        刃とは人間の意識。実存を超えたところに、川の川そ
        のものを超えた無限の波動がある。静けさがある。大
        自然の答えとして。大自然の身体の宇宙に宿す答え
        として。その答えを、目の当たりにしながら、手に出来
        ぬ狂おしきまでの心が胸を打つ。

          「川の構図」

<うろこ雲が 映える川は 今は静かだ その内側に 幾本もの刃を隠し持って
 ちらっと上目ずかいに 波がざわついている

 岸辺にそよぐ 葦の歌を聞いて 流れたこともあった 水面を ゆっくり撫でて 
 吹き抜けていく風よ

 母の手のような温もり だが刻々と冷めていくのか いない日々が 切なく迫る
 ときがあって

 その上流で 母の子守唄は底まで染みて 母は 常に先を流れて 杭い ついに
 泥にまみれて 散っていった あのさいごの虹色の飛沫を忘れない

 夕闇を裂いて沿岸の家の灯がまたたく 川は灯りを川面に映しながら思う 人々の
 心の中をゆったり 流れる川でありたいと 

 もっと下流に向かって 刃を一本一本 捨てていくのだ>



Posted by nakao at 18:29│Comments(0)芸術
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