2012年07月31日

サトシは交信している

<サトシは交信している> 記 中尾彰秀             詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(67)

 「二〇一二年の仮歩道から」  下前幸一詩集 文芸社 2012年 文庫判 600円+税
                              25篇 120ページ

      その非在とは、存在を合理的に認める余地がない存在であり
      非合理存在の略。合理性などという人間の尺度を超え、非合理
      すらも存在とみなせば、そこに大自然も宇宙もあるのだ。
      仮歩道もいつしか道となる。

      私は、詩人下前幸一の「非在」に、インド風景を見る。
      生も死も大自然の暴走も驚くべき人間の流転も生成も
      ゼロと無限の発見された地、究極の真実-----梵我一如--
      ------宇宙のあらゆるものは自分自身、その思想と哲学と
      宗教の発展した地。

      それはこの一詩に、空恐ろしい程の日常の発見を持って
      描かれている。

            「サトシは交信している」

      <サトシは交信している 昼下がりの二月 六畳間のベビー布団の領地から
      あるいは夕暮れのLDk 座布団の別荘地から サトシは交信している

      「タコ踊り」と彼女は言う 不思議なものを名ずけるように

      深みからゆっくりと浮かび 眠りの浪間を漂い 浅瀬の目覚めをたゆたいながら
      踊るように 両手をかざし ゆらゆらと揺らめかせ くるくると振り回し「タコ踊」る
      サトシ この世に生まれて、一か月と二週間 あとさきも、右も左も分からない

      暗い理不尽のただ中で サトシは泣く ありったけの力を振り絞って 顔面を真っ
      赤にさせながら 今ここにあるという不条理に サトシは泣く まだ首の据わらない
      存在の根元から 全き受動の海に サトシは泣き疲れ 眠っている・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・

      生きるというその始まりの場所から サトシは交信している 他ならない僕たちの
      深く懐かしい何かに向けて>



Posted by nakao at 14:33│Comments(0)芸術
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