2012年09月11日

鳥たちのように

<鳥たちのように> 記 中尾彰秀            詩人・ピアニスト・ヒーラー


 みんなの人生を至福にする百の詩集(75)
 「鳥たちのように」 おしだとしこ詩集 土曜美術社 2012年 定価2000円+税
                                A5版 109頁 27篇

      人生の迷いの途上に見出す、詩的生態リズムが
      鈍く美しく鋭く語りかける。ひょっとしたらそれは、
      鳥たちの囀り、あるいは体内の水の一滴。
      憧れではない、憧れとは自分自身を何も変えられ
      ぬ弱虫のかつての抒情。宇宙の本質を内に見出し
      見出そうとする活力。

        「ことばに寄り添う風景」

<足元から暮れていく晩秋の色に染まりながら 六十五回目の夏を弔った元安川
 を眺めている

 水は川を満々にして流れているのに 霊送りをおえた川底には まだ あの夏の
 灼熱が沈んでいるから この川を流されていったものたちの瞳が 川面で青白く
 ただよっている ときおり 擦り切れた映像をぬらして 足元をヒタヒタと水が叩き
 雨の日がさびしいのは 慈雨 甘雨 雷雨 豪雨 意志をもつ手で閉ざした扉を
 うつからだ 

 水は行方知れずへと 流れはしない 大地に降りそそいだ雨は山槇でかがやく
 雪になり 天と地のあわいを いろどる虹になり 高みから低みへ そして また
 高みへと昇っていく 水のメタモルフォーゼ はやい落日を追うように 晩秋の西
 空を雲が歩いている あれは 天と地を自在に往き来するものたちが 雨上がり
 の空に架かるプロムナードを渡って 天界へ戻っていくのだ きっと

 水のひとしずく ひとしずくが 萎えていくいのちを たちあがらせようとして
 この 体内にも満ちている>
      



Posted by nakao at 17:45│Comments(0)芸術
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