2012年12月11日

時代の波止場

<時代の波止場> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(89)

 「時代の波止場」  佐相憲一詩集 コールサック社 2012年 2000円+税
                       A5版 160頁 30篇

       青年の社会批評詩は、世界の歴史の流れを捉え
       今生きることの哀切さを描く。そこには、愛による
       連帯が支えとなり、いかなる事態でも希望を忘れ
       ない。少し短気なのか頭良しの詩は、どの場面で
       も、内面の哀愁と社会性に集約される。それも優し
       さの最たるもの。

       波止場の波音なる大自然は、人間の自意識も虚し
       さも丸ごと受容してくれるのだ。

 <夢中で生きていると 時間が消える 

  しんどかったりつらかったりすると 時間の砂に足をとられる

  混沌としたなかで 時に針が逆方向に動き出し 蜃気楼が追いかけてくる
  ああしたかった こうすればよかった

  だが心臓に手を当ててみれば いま生きているのだ

  海辺に立って 陽光の空を見上げる

  水金火木土に月と太陽 ここは太陽系第三惑星のはずだ

  ・・・・・・・・・

  いつの間にか戦が大きくなり いつの間にか貧富の差が大きくなり
  いつの間にか支配関係がはっきりして いつの間にかハラキリとか
  いつの間にか侵略戦争とか ・・・・・・・

  この頃気になる体内も奥に確かに 胃腸、肝臓、脾臓、腎臓、心臓
  脳、血管、骨 もっと気になる内側には (こころ)の気配

  万葉集の無名詩人の人体と ユーラシア原始クロマニヨン人の人体と
  ほとんど同じ構造の この体

  こころは 進化しただろうか
  ・・・・・

  時間がないないと言いながら 夕焼けの海に立つと

    (時間はある やれることはある)

  生きるんだと  新しい波音が聴こえてくる>
                               「波音Ⅹ」






Posted by nakao at 17:50│Comments(0)芸術
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