2012年12月15日

さ迷えるスウィニー

<さ迷えるスウィニー> 記 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(91)

 「さ迷えるスウィニー」 シェイマス・ヒーニー著 訳者 薬師川虹一 坂本完春 
                                 杉野徹 村田辰夫
               2012年 国文社  1800円+税

      ヨーロッパ中世文学の名作。
      戦のさなか、呪いによって鳥に変身させられた
      王の描写・詩は、大自然の美しさと深さを美文によって
      時を超え感動させる。
      背景には古来の無意味でばかげた、宗教上の対立もあるが、
      呪いの原因は王の横暴による殺戮。いつの時代もあってはならぬ
      人間の自惚れ悪行もさることながら、千年を経ても、なお、その本質は
      変わらぬ大自然を思う。

      現代は、自然なるものを破壊し利用し尽くし、一見大なる物的繁栄を
      果たしているが、今も昔もこれからも源は、体内にもある宇宙大自然である。
      愚かなどこかの国は、未だに経済成長を求め、またしても国民は後で
      騙された騙されたと歌歌う。

   <・・・・・・この群れの母は 追いぼれで灰色 母に従う牝鹿たちは 枝のような多くの
    枝角を持っている 

    わしは母鹿の頭の 灰色の聖域に紛れていたい 母鹿の迷路のような枝角の間に
    ねぐらを持ちたい そして谷を越え わしに向かって叫ぶ 牝鹿の藪の様な 角の中
    で巣をつくりたい

    わしはスウィニー 嘆きの男 谷間を急ぐ逃亡者 だが こう呼ぶ代わりに わしを峰
    の頭 牝鹿の頭と呼んでくれ

    いつも好きだった泉はダンモール砦の泉 清らかで冷たい味の ノックレイド丘の泉

    ・・・・・ わしの唯一の休息は 聖所での永遠の眠り その時はモーリングの大地が
    わしの傷口に黒い香油を落とすのだ

    だが ほら 谷間にあの突然の 羊の鳴き声と鹿の鳴き声 わしはローナン・フィンに
    羽を生やされた臆病な鹿>

    



Posted by nakao at 16:33│Comments(0)芸術
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