2014年02月11日

橋爪さち子詩集

<橋爪さち子詩集> 記 中尾彰秀                 詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(64)

 「橋爪さち子詩集」 近文社日本詩人叢書 75  1988年 定価1000円 27篇 90頁

      硬質の言葉の内に秘められた人への思いやりは
      むしろ自分自身の探究。日々暮らしの微妙なこと
      に、深い気付きを見出し、改めて世界を宇宙を受
      容する方式を自らの詩となしている。

      そして闇は闇のまま、いつしかひかり輝くだろう。

            「微粒子になる」

<地球が回転をかさねると 子宮の周期もわたしを回転していく 数十世紀にわたる羊水は
 子どもをむげんにつつみ吐きだしてきたのだし 海水は悠然と満干を繰り返してきたのだ
 宇宙は収縮し膨張し 地球の女たちは 天体と同じ律動を抱いて生きてきた

 女たちは お臍で宇宙と繋がっている わたしは子どもを従えたまま 街を突き抜け海を横
 切り地球を飛び越えて 他の惑星に至るまで歩き続けていけるし 砂漠に横たわって太陽
 とも交接できる 素早い朱が天空を染める朝は わたしの内臓も新しい血液であふれる
 けれど 地球は永遠に宙を浮き続ける星と知る時 わたしは ただよう星に 耳輪のように
 ぶらさがりながら 地球と同じくらい孤独だ

 地球は 虚空の闇に深く包まれていることや ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・風は海の向こう
 から絶え間なく 死者達の伝言を運んでくる 辿れない距離を辿る内に 風は実態になるだ
 ろう 女たちは 遥かな生誕への道のりを辿りながら 宇宙を響く微粒子になる>



Posted by nakao at 14:24│Comments(0)
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