2014年01月09日

岩本健詩集

<岩本健詩集> 記 中尾彰秀                   詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(53)

 岩本健詩集   コールサック詩文庫13 2013年 定価1500円+税

      物的感情に囲まれた心の混沌。
      混沌にとことん終始する「いらめき」
      の詩人。「ひらめき」なる内なる光に相反する。
      日常にスリリングをいつも抱くリアリズム。
      思いもつかぬ発想は永年に渡って大きな
      詩的構築となっている。

         「山田万作」

<散歩していると フト 山田万作に会えるような気がした。 ふりかえると、
 そこに10年ぶりの 山田万作の顔があった。 山田万作も ぼくと 逢うような
 感じがしていたらしい。 人間には超能力があるのかな、と言うと 山田万作は
  「愛する者とは別れなければならぬ 苦しみがある。 憎たらしい奴とはめぐり
 合わねばならぬ 苦しみがある」 と、 スタコラどこかへ行ってしまう。 虫が知
 らすということがある。 今、ぼくが暗殺されるという 予感がして 後をふりむくと
 暗殺者の顔がそこに在ったら どうしようと思う。

 けれども暗殺される人は 金力・権力・名誉をたっぷり持った人--- ぼくには、そ
 の何れも持ち合わせがない。 だから、ふりむいても 山田万作という 間抜けず
 らが在るばかりで 朴の生命は安全--- 山田万作よ また、どこかで ひょっくり
 逢おうと ぼくは ひとりごとを言う。>
          第一詩集「人の木」 1976年より  


Posted by nakao at 21:08Comments(0)芸術