2014年01月11日

市原礼子詩集

<市原礼子詩集> 記 中尾彰秀                   詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(54)

 「愛の谷」 市原礼子詩集 詩画工房 2013年 2000円+税 A5版 118頁 39篇

        どの詩篇にも漂う寂しさ。内なる世界にぽっかり空いた
        穴がある。それを埋めるがごとく、詩は書かれているの
        かも知れない。それはむしろ、羽ばたく為の理由であり
        弾力の根拠であり、世界の本当の答えを得る為のきっ
        かけなのだ。

        世界のありとあらゆるものは、愛によって存在根拠を得
        ている。歪んでいようがいまいが、愛によって。どんな高
        度の技術によって羊皮を被っていようとも。単純で奥深い   
        波長で、オーリングテストのごとき探索で、単なる読解力
        を超えて魂の力で人生を観れば、明らかになるのだ。

              「遠い社」

<空の片隅をめざして への字のかたちで帰っていく 鳥たちよ あの方角に
 わたしの 残してきたものがある

 わたしは ほとんど忘れている わたしは 急に思い出す 降るように 降るように
 戻ってくる 黒緑色の木の群れ 光ざわめく枝葉の下 柔らかく かぐわしいものを
 抱いて歩いた 私のお気に入りの散歩道

 明るい色に塗られた遊具のある 小さな公園への通り道 しかし そこは 死者の
 葬られる場所でもあった

 わたしのうでの中で青ざめて 息も絶えようとしているのだろうか それとも 葉蔭で
  すやすやと 眠りおちているのだろうか 

 生と死の両方を胸に抱いているのに それらは双方のように  よく似た顔を見せて
 いて 見分けることができなかった

 暗い社 明るい社 死者達の眠る社 空の片隅をめざして帰っていく 鳥たちよ
 あの社は いまでも 風に揺れているか>
  


Posted by nakao at 17:44Comments(0)芸術

2014年01月11日

根本昌幸詩集

<根本昌幸詩集> 記 中尾彰秀                   詩人・ピアニスト・ヒーラー

 「荒野に立ちて------わが浪江町」  根本昌幸詩集 コールサック社 2014年 1500円+税 
                                           A5版 44篇 160頁

       地震と原発によって居住地域を出ざるを得なくなった詩人。
       あと何年で戻れるというものではない。故郷を奪われたのだ。
       大災害と国の誤政策と企業の嘘によって。そして、今もこれか
       らも国民を騙す者どもよ。
       奪われたのは故郷だけではない。命、家族、仕事、環境・・・。
       自らの命は助かったのだから、生きているうちに、やるべきこと
       をやり抜くという気概。
      
       故郷は心の中に生きている。地球として。宇宙として。魂の
       永遠よ。

              「福島県」

<最初は 福の島でした。

 島はどこにあったのでしょう。

 湖や沼や浦がたくさんあって その中に 島もたくさんありました。

 だから。 で。 しょうね。

 私はそう思っていますが 実は貧しい所でした。 それが そのうち
 原発とかいう でっかい建物が出来て いやにフトコロがあたたかく
 なりました。

 やっぱり。 ね。 福の島でした。

 ところがどうでしょう。

 でっかい地震がきて でっかい津波がきて 原発がメチャメチャにやられて。

 人々は日本国中に散らばって となりにいた人の安否も分かりません。
 この私も 今は 避難民とか言われて。

 小さくなって 見知らぬ所で ひそかに生きている。 そんな始末で。

 ああ福島県が 世界のフクシマ県になりました。>

 


  


Posted by nakao at 16:57Comments(0)