2014年10月09日

唸る

<唸る> 詩 中尾彰秀                   詩人・ピアニスト・ヒーラー

 創作の意欲や時間があっても
 何も思い浮かばぬ時は
 音や言葉を超えた
 存在という
 宇宙一体 森羅万象の中枢に 
 既に突入しているのだ
 
 ウオー ウオー ウオー

 正しく朔太郎の
 「月に向かって吠える」
 昨晩は皆既月食
   


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2014年10月09日

風呂井まゆみ詩集

<風呂井まゆみ詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 地球を至福にする百の詩集(14)

 風呂井まゆみ詩集 「私は私の麦を守っている」 編集工房ノア 2014年 2000円+税
                               A5版 24編 96頁

     百年に満たない短い人生の歴史を経て
     今ここに生きる人間は
     今ここにいかなるものを持っているか
     確かに過去の貴重な物的経験はあり
     常にそれがのしかかり
     人生に味覚をもたらしはする
     しかし今ここに生きるという
     現実の真相は
     物的次元に限らず人智超えしものがある
     過去の物的リアリズムに
     はまりこだわり意地でも喰い下がり
     感情に止まってしまうと
     時代遅れの過去の詩人先生たちは
     がぜん気分を良くし安心するが
     そのお褒めの言葉は偽物である
     詩としても偽物である
     今ここに生き生かされているという
     神秘体験に至らない限り
     生命の本質イコール世界宇宙の本質に
     およそ至りはしない

     どんな都会においてもあるそこに
     内なる時代を超えた波動に
     届きたいが届かない
     いきどおりの感じられる
     この作の最後3行である

     「私は私の麦を守っている」

<空が白みはじめると 山の中腹から黒々と 一気に舞い出てくる
 何百のカラス 上空で大きく旋回しながら群れとなる

 無人駅の一本の桜の木の下 焚き火を囲んでその時を待っている 
 子どもたち すかさず年長の子どもの号令 割り当てられた田んぼへ
 四方八方駆けてゆく カラスよりも大きく叫びながら

 村の子どもたちは麦の芽が出る晩秋 麦をカラスにたべられないように
 毎年 親たちの田んぼを守った 稲束の焚き火を囲んで夜明けを待つ駅
 着膨れした子どもたちの輝く目

 どー どー どー  子どもたちの叫びは天にひびく 一匹のカラスも
 田んぼに降ろさせまいと 畦道を器用に走る子どもの私 どー どー 
 どー  中空に黒く停するカラスの群れ 諦めたカラスが山に戻ると
 子どもたちは 登校の準備のため急いで家に帰る あかあかと陽が
 昇る ぽつんと残る 枯れた桜の木と小さな駅 始発の蒸気機関車
 はまだこない

 ふるさとの北丹鉄道が廃線となって久しい

 都会の空の下 今でもカラスを追う衝動にかられる 私は私の麦を
 守っているのだ>  


Posted by nakao at 17:22Comments(0)