2015年02月18日

地下水道

<地下水道> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 地球を至福にする百の詩集(25)

 「地下水道」 岩井洋詩集 2015年 竹林館 定価2000円 B6版 116頁 30篇

      地下水道と言えば
      「ゴーストバスターズ」か「逃亡者」(ハリソンフォード)
      と思いきや「ジャンバルジャン」と来たもんだ」

      ドラマチックな紹介に始まり
      表紙写真のこの上なく美しい
      宇宙生物のような地下水道が
      読者の血流に直結する。

      よく読めば
      たまたま地下水道の仕事をしているだけで  
      決して泥臭くも自意識の泥沼でもなく
      むしろ闇を浄化するがごとき詩文。

      ははあなるほど
      表紙写真のごとく
      光を受けてとてつもなく美しく輝く
      地下水道のエイリアン
      いやいや日常をさりげなく
      シンプルに生きる生きざまが
      詩人の身を持って描かれている。
      ややこしい詩論や思想を通り越して
      今ここに生きる平凡さ。
      生命の美しさ。

         「流れるせせらぎの下で」

<マン歩ールの入り口で命綱を腰につけ ステップを下りていく
 
 深い闇の中に、それでも光が刺しこんでいて あたりの景色が見えてくる

 流出のゲートを確かめ 土藻の巨大な雨水貯留管を振り返る 

 地上では、流れるせせらぎが見えるだけで その下に作られた都市を守る
 基盤施設は いつも隠されている

 議会という民主主義の仕掛けの中 費用対効果などという、はやりの言葉で 
その可否が質され、説明がなされ 進められていく巨大プロジェクト

 はたして、本当に必要なものを この国で、この街で 私たちは作っているの
 だろうか

 想像をはるかに超える津波が あっけなく全てのものを飲み込んでいった
 壮絶なシーンを思い浮かべながら 私は 施工検査のための図面を片手に
 背丈を遥かに超える管路の中に 入って行く>
      
        


Posted by nakao at 18:37Comments(0)