2014年09月12日

銀河詩手帖266

<銀河詩手帖266> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 地球を至福にする百の詩集(10)

 「銀河詩手帖266」 2014年 銀河書房 800円

      世の中、主知の感情の詩や音楽ばかり並ぶのは
      単に過去の欧米的教育の産物。
      それに反して、存在の波動-------内なる精神的世界に迫る一作である。
      いずれテーマも詩形も掘り下げられるであろうが。
      哀愁は存在表現によって成し遂げられている。

      「入江に近い駅」   近藤摩耶

<ルネッサンスの柱に支えられた 玄関ホールの半円が ゲストを待ち受け 新しかった時
 の驚きが まだかすかに漂う 二階建てホテル 右わきに小さな会堂 大小のカナリーヤ
 シが みごとに整えられ 芝生に海風 城を守る堀のように手前に水路が引かれ 駅の階
 段からは 沈む夕日や 真珠の笠をかぶって 巨大になった白い太陽が 見えることもある
 雨はなく 全天どんより曇り黄みがかったグレーが 細部まで空間を満たす 月は水路を
 渡って 玄関ポーチを迂回し ホテルの背後 入江の後の 護岸ブロックへ 中のかすかな
 砂粒へ 何故なら それこそが 入り口に 流れ着く いくつもの 物語が書かれたリボンの
 入った アンチィークなガラスびんの 長い時の流れに くり広げられる たくさんの ストーリ
 ーのひとしずくまで 風によって奏でられる すべてを聴いてきたのだから>  


Posted by nakao at 17:59Comments(0)