2014年09月06日

平野裕子詩集

<平野裕子詩集> 記 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 地球を至福にする百の詩集(8)

 「季節の鍵」 平野裕子詩集 朝日カルチャーセンター 2006年 非売品 A5版 163頁 40篇

     鍵とは世界の本質に至る前の小道具。
     小道具にこだわってその果てに何に至るのか。
     小道具とは詩。
     世界の美しき躍動する魂。
     歓喜あるいは光。

     ちゃんとドアを開けて
     この宇宙の無限を
     感応しましょうね
     その直前の心情詩

     「季節の鍵」

<すっかり磨滅した ドアの鍵は まわしてもまわしても締まらない
 
 昔の恋人のマスコットがかかっている ドアに合わせる鍵はあったろうか
 
 主題となる旋律を待つように くりかえすことの喜びが いつからか倦怠を誘い
 心の鍵は締まりもせず 開きもしない

 それぞれにかくし持った鍵の 番号をあわせようとして すり減った身体の休暇は
 いつ来るのだろう

 地中深く埋まった鍵を 握り起こすには 高度な時間の技術を要し 砂漠の中で
 日々空回りを続けているが

 啓蟄のころ マグマが虫の穴に キーを合わせたのか 私の鍵を開けようとする
 誰かが遠くで呼んでいる 光の春>

  


Posted by nakao at 17:26Comments(0)