2010年08月09日

私の第二次大戦

<私の第二次大戦>  記 中尾彰秀

 あなたの人生を至福にする百の詩集(62)

 「 鏡の中 」  田村照視詩集  竹林館  定価2000円+税
                            2010年出版

   一生涯忘れ得ぬ体験がある。それは、何十年経ても鮮やかな
  光彩を持って蘇える。とあるところより、無事生きて帰るとは、ま
  ぎれもなく生かしてもらっていると言う、極めて神聖な事。
   戦争と言う、国の大きな過ちの中にあって、「生きる」真実が
  生々しく浮上する。

   体験の一切は、単なる光景ならず、詩的鏡の中で宇宙となって
  いる。

         「私の第二次大戦----帰国----」

<終戦から四カ月 やっと引揚船に乗れた 北朝鮮から南の国境の
 町へ ソ連兵の女狩りと略奪に 家族六人で戦いながら 不確かな
 情報を頼りに 町へ 村へと

 引き揚げ許可に 手を取り合い 小躍りして 漆黒の闇のなかを
 夜を徹して小さな港へ そして 美しい港町 仁川に着いて また
 許可待ちで一カ月 此処の避難宿舎は 東本願寺別院 集結した
 人は 数百名 子供も多い 警備のアメリカ兵は陽気で チョコレート
 を呉れる ソ連兵とは雲泥の差だ 子供心にその差を見た

 鉄路でプサン迄は三日三晩 匪賊に襲われる度に止まる 貨物車の
 中は恐怖と闇の中 あーあ それも これも きのう迄のこと この船は
 間違いなく 日本まで連れ帰ってくれる>  


Posted by nakao at 17:38Comments(0)芸術

2010年08月09日

冬萌 百二十句

<冬萌 百二十句>  記 中尾彰秀

  あなたの人生を至福にする百の詩集(61)

  「冬萌 百二十句」  田中信爾句集 編集工房ノア 2000円+税
                                  2007年出版

  時雨きて土の香りをたたせけり

  貝殻をふめば音せり冬の浜

  花菜風遠くに海の眠りたる

  ベートーヴェンのごとく明るき盛夏来る

     句の悦楽は、風土との一体から来る。
    西欧的自意識分析を超えた波動。
     そこで、風土と自らがなぜ一体なのか。
    風土・地球・宇宙との一体。物的意識に
    蹂躙された実存ならず、奥深き波動に魂
    を同調させるとやってくる癒し。

     人生の秘密であり本質。  


Posted by nakao at 16:54Comments(0)芸術