2010年09月21日

回転ずし

<回転ずし>  記 中尾彰秀      詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(73)

 「T.を買いに」  もりたひらく詩集 私家版 非売品 A5版 120頁
                      2007年出版 35篇

         「 回転ずし 」

<哀しみを トレイに乗せて 流してみた 誰か取って食べてくれないかな
  けれど 視界から消えたのも束の間 哀しみは また私の元へと 戻っ
  てくる 

  イクラやサーモン、ウ二、マグロ おいしそうなお寿司に はさまれて 
  二巡 三巡 より冷たく硬くなって 益々みじめになった

  私は独り・・・満席でも

  哀しみを あたため ほぐしてやれるのは 自分しかいないんだと 
  哀しみを 咀嚼して 味わって 呑み込んだ>

         挫折しても生きていくには勇気がいる。
        それにしても、挫折とは、哀しみとは何か。
        最近は、悲哀症候群てのがある。しかし、
        その本質とは何かを追求して、化けの皮を
        剥がし、質的に転換し、人生を変える事こそ
        勇気である。詩である。人間である。我々の
        魂の奥には、無限の愛があるから。

         何事も呑み込んで、排泄すると、自然との
        触れ合いが出来、生きる事の波長が変わる。
        同詩集の「みず」のごとく。

              「 みず 」

<真夏の生活に炎症をおこした 身体をいやすように シャワーを浴びた

  恋人に身を委ねた ときのように うっとりと 目を閉じて 深く 息を吐
  きながら 乳房に 腰に 腿のうちらがわに 吸い付いては おちてゆく
  おびただしいほどの雫を 感じながら 風呂場の排水口から みずが
  流れる 私の中から 少し疲れた 私のみずが 川へ やがては海へと
  還ってゆく

  いつのまにか 私のまわりを 風が揺さぶる 繁った木々の深い緑が
  陰をつくり そよぎだし

  清らかに みずとなって 私のなかに 流れてゆく>
  


Posted by nakao at 18:20Comments(0)芸術