2013年08月16日

山口昭男句集

<山口昭男句集> 記 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(33)

 「讀本」 山口昭男句集 ふらんす堂 2011年 2190円+税

      「降る雨のうしろ明るき冬至かな

      境内に赤子の声や魚白子漁

      春雨にぶつかるように猫歩む

      さくら餅明治の音の明るかり

      犬ふぐり正しく風を受けており」

   日常に於ける世界と身体の触れ合いは、
   かくもスリリングでドラマチック。宇宙一体で
   あるべく世界は、語りかけてくるのだ。

   いつの時代も雨は、神がかり。
   魚へんと白で一字であったが、パソコンで出せなかったので
   「魚白」と表記した。人間は横暴にも、動物の卵を貪るが
   お寺の境内に、魂の声がする。どうか浄霊して下さいませ。
   古今東西、笠を使用するのは人間だけ。ああ不思議。
   明治はまだ大きな戦争で負けていなかった時代。だから明るい
   というイヤミを込めて、美味しい餅。
   牝犬は確かに人間と同じく、尻を振って歩く。雄犬は金の玉
   冷やしながら、堂々と歩く。理にかなっている。  


Posted by nakao at 17:20Comments(0)芸術

2013年08月16日

関中子詩選集

<関中子詩選集> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(32)

 「関中子詩選集151篇」 2013年 コールサック社 コールサック詩文庫(12)
                      定価1500円+税

      人間の感情は止揚されねばならない。
      そのまま悲しいうれしいの、これ見よがしでは
      テレビのドキュメント。感情の奥域に至って
      世界を宇宙を浄化する。そのためのエネルギーを
      内包させて初めて、詩は詩に、音楽は音楽に
      絵は絵に、芸術は芸術になる。
      あるいは人間は人間になる。
      そのエネルギーとは、
      哀しみを噛み締め、愛を宇宙一体にする優しさ。

      「枇杷になる日のために」

<風が吹くと めんどりの鳴き声が途切れる その日 枇杷の木の下で
 お乳をもらった山羊のおとむらいをした

 枇杷になるといいね 枇杷に 山羊を追いかけてふざけた子犬がほほえんだ
 そうだね みんな真剣だった 黙々と土をかぶせ乾いた涙の跡を風に触らせ 
 山羊を鎮めた 枇杷になれよ 山羊の白い毛よ もやもや土の下で騒ぐな>

       大人の童話は、神話になって魔法になって祈りになって。
       生命は人間の知を超えた遥かな遥かなここを飛翔する。
       それが日常以外の何物でもない。
       万物は宇宙一体の環なのだ。

  


Posted by nakao at 16:48Comments(0)芸術