2011年01月25日

矢口以文詩集

<矢口以文詩集>  記 中尾彰秀        詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(96)

 「詩ではないかもしれないが、     矢口以文詩集 コールサック社 2010年出版
   どうしても言っておきたいこと」       A5版 65篇 224ページ 2000円+税

 詩の形態を気にすると良い詩が書けない。それは、今も昔も同じらしい。しかし、自由奔放
 に書かれたものは、深い愛に基ずいておれば、立派な詩となる。
 古典主義者は詩と評価しないかも、と言う慇懃な表題の詩集。しかしむしろ、成功している。
 格好良い言い方をすれば、命を捨てて命に目覚めるがごとく。

            「孫とおじいちゃん」

<「おじいちゃんは戦争に行ったの?」 ひざに抱かれて絵本を読んでいた孫が ふっと顔を
 上げて問いかけた 一瞬 祖父の顔がこわばった しかしすぐ柔らかな顔に戻って 「うん
 行ったよ」と答えた 

 すると孫が 「だけどおじいちゃんは 人を殺さなかったんでしょう?」 とたずねた 「おじい
 ちゃんは優しいもんね-」 祖父の顔がまたこわばったが 「うん 殺さなかったよ」 と
 何気ない声を装った 

 「よかった」 と孫はほっとして また 絵本の世界に入って行ったが 程なく軽やかな寝息を
 立て始めた 祖父はそっと孫を寝かせて毛布をかけ その寝顔を眺めて 大きなため息をつい
 た>

    説明を省いた名詩。しかし、孫は事実を知っていたのではないだろうか。
    知っていても、おじいちゃんは優しいおじいちゃんであり続けて欲しいのだ。
    知らぬ振りをして、おじいちゃんを傷つけたくない優しい孫なのだ。
   


Posted by nakao at 18:18Comments(0)芸術